41.《ネタバレ》 「シェーン」やイーストウッド主演の「荒野のストレンジャー」を融合させた王道西部劇。
金の採掘を続ける二つの村同士の対立が主軸。
金を掘るには鉱脈がある山場に住居を構える必要性、水の豊富な場所の確保が重要となる。
水の重要性がここにも描かれる。
人を殺せば州法で罰せられるが、村荒らしや家畜殺し、度重なるストレスや心臓発作による“自然死”は見逃されている。
西部に生きる者にとって家畜は家族同然。
見逃される罪にも限界が来る。
そこに現れた“ペイルライダー(死神)”の牧師。
助けてくれと願えば来るし、居ると思ったらいないし、居ないと思ったら居る。
幽霊みたいに神出鬼没な男だ。
ガンマンというよりは騎士道精神のような男。
「シェーン」では最初主人公は受け入れられないが、牧師は村の者を助けた事で歓迎される。
第一印象って大事だなと思い出す。
牧師が主人公というのも面白い(“捜索者”は牧師が警備隊の隊長やってたね)。
人を殺さないという理由も“犯せば州法で裁かれる”という理由付けが成されていて良い。
牧師が訪れた村は中々金が取れずに経済的に窮地に有り、夢も希望も諦めかけていた。
牧師がひたすら岩に槌を下ろす力強い姿を見て、村人も次第に心の強さと誇りを取り戻していく。
イーストウッドはこういうくどいくらいの人間ドラマが良い。
そこに殺しを合法として許された保安官が買収されてやってくる。
街を守るはずの者が金で動く・・・彼らも一人の人間でしかない。
この保安官が「許されざる者」になると、独裁者のように容赦なく恐怖政治を展開する。
牧師は村人を見捨てて逃げても良かった。
ただ、牧師は義侠心や博愛主義で戦ったのではない。
成り行きとはいえ助けた者への義理、世話になった恩、牧師自身のケジメのために戦った。
保安官たちはやってはいけない最大の過ちを犯した。
“無抵抗の人間を殺した”から?
違うね、“恩人を殺しやがった”から。それだけ。
その人間の死は村人の結束を強固にし、牧師は世話になった者たちのために戦う覚悟を決める。
後の「許されざる者」もそうだが、イーストウッド扮するガンマンはいつも他人のために引き金を引く。