99.《ネタバレ》 白黒による撮影がクライマックスのパートカラーを際立たせる傑作。
「気をつけー!」の掛け声とともに軍艦マーチと共に日章旗を掲げた行進、そして「鬼子来了(鬼が来た)」の題名!この軍艦マーチは幾度も劇中で繰り返される。
一体どんなクソ反日映画がはじまるのか、どうボロクソに言ってやろうかと最低な好奇心で胸を躍らせたが(スイマセン私はそういうクソ野郎なのです)、その期待を見事に裏切ってくれた。
長い坂道を下っていく日本軍、その様子を見に子供たちが集まる。子供たちと交流する軍人。彼らは毎朝のように来るらしい。
闇夜、密室、蠢く脚と喘ぎ声が情事を物語る。急な来客に妻を隠す。日本軍に怯える恐怖を表す。
戸を開けた途端に眉間に拳銃を突きつけられ、ある“依頼”と共にズタ袋を置いていかれる。障子を突き破る日本刀の切っ先で念を押して。
集まって相談する村人たち。ズタ袋から出てきた男の口から出る驚愕の一言、布で遮られる表情、罵詈雑言をわめき死を望む者、違う訳を言って生を望む者の対比。違う訳を教えるやり取りが笑える。同じ日本語でも嘘をいいまくるwww
村の住人役の監督(チアン・ウェン)もそれをニヤニヤしながら見つめる。
前半はコメディ映画のような微笑ましい雰囲気が、やがて地獄のような凍りつくやり取りに変わる。ドアの開け閉めだけでもドキドキする。このドアにおける緊張は幾度も挿入される。
他人の叫びを拒むような演奏、暴れるので拘束されて介抱される、雪が降り始める外、防寒着でぐるぐる巻きに。怖がりながらもちゃんと世話をしてくれる優しさに男は打ちのめされていく。
死を覚悟した男に生きる勇気はなかったのだ。
武装して現地住民に襲われる幻。悪夢ではなく願望として。
兵士二人の鶏肉をめぐる会話、黒い影、銃剣で地面にサークルを描き動かないように言う。日本兵がいる事を気づかれないように振る舞うスリル、鶏の首にかけられたもの、子供も油断できない。
サーチライトが照らす中を進む緊張、ズタ袋に拘束されながら穴を開け、細い筒で水を飲ませる。
しかしよく泣く男だ。死にたがりは時間の経過とともに思考も変わっていく。彼らの反応が訳は嘘じゃないという事を物語る。
本部でのやり取りもピリピリとした緊張が。うだるような暑さでも規律によって己を戒める軍隊、存在そのものが中国に凸な隊長、そしてロバあああああああ貴様ああああああっ!
メンツ、プライド、面目、話をまともに聞く気もない上層部、“契約”電話。
この隊長が本当に策士と言いますか、確かに約束は守るクソ上司です。「どうせ○○○んだし、殺るだけ殺っとくか」というキレ者。日本刀の柄を首筋にあててのしごきも凄い迫力。「生きて帰ってきてんじゃねえよボケナスッ!」という感じでボッボコにしてます。怖ー。
ニコニコ顔で毎朝巡回してた軍楽隊も豹変するんだから怖い怖い。みんなクソ上司に「殺されたくない」という恐怖で動かされるのである。
賑やかな歓迎パーティー、穏やかな交流、どんちゃん騒ぎがある一言で凍りつく。村人の態度に苦悶の表情、徐々に不穏な空気へと変わり、壮絶な血祭と化してしまう。淡々と演奏を続ける楽隊が怖い。
駆け抜ける火、火、火、戦いの終わりを告げる遅すぎた放送・・・復讐、土砂降りの雨、痘痕だらけの面、最後の一撃とともに色づくフィルム・・・。