1.バッハの演奏とアンナのナレーションだけで構成された作品で、なんでも映画作家のための映画とも言われているとかいないとか。映画作家を目指したことも無ければ今後も無いだろう私にとっては、この映画の特徴は見ることができてもそこに魅力を感じるまでは到らなかった。楽曲が演奏される間、カメラは全く動かずに延々と演奏者を捉え続ける。長い1カットの後の短い1カットのハッとさせられる構図の妙技は確かに味わえる。しかしこの映画の本当の凄さはおそらくストローブとユイレの映画そのものの概念にこそあり、その概念を見事に作品に転化させていることにあると思う。映画にはりつく劇という無駄、演技や演出の中にある無駄、無駄という無駄を極限までそぎ落とした究極の映画。そんな究極の映画を楽しめるほど私はまだ熟していないようだ。時を置いてまた観る機会に恵まれたい。