12.《ネタバレ》 とりあえず題名に惹かれて見た。邦題は原題のほとんど直訳らしい。
題名からするとまず「テハンノ」というのがどこなのか気になって仕方ないので映画を見る前に調べたが(どうせソウルのどこかだろうとは思ったが)、要は漢字で書けば「大学路」で、ソウル市観光公式サイト(日本語)によれば「若さ溢れる演劇の街」だそうである。ただし劇中では魔窟のような扱いになっている。
表音文字のはずのハングルで대학로 dae-hak-ro と書いてあるのに「テハンノ」と読めというのは理不尽なものを感じるが、これはハングルというものがいわば“漢字を使わないで漢字を表記する”コンセプトの文字だからと思えばいいのかも知れない。一方で上記の市公式サイトではなぜかカタカナで「テハクロ」と表記しており、これは日本人が「大学路」という漢字に結びつけやすいだろうという親切心ということか。しかし実際に行った日本人が「テハクロ」と発音して現地住民に鼻で笑われたなどということになったらどうしてくれるのかと思うわけだが、この映画を見て行こうと思った人ならそうならないことは間違いない。そんな人がどれだけいるかは別として。
映画本体に関しては、少なくとも最初のうちはけっこう笑える。婆さんの愚痴たれなどはまるきり異民族の行動様式なので笑ったが、これはもしかして現地の観客にとっても笑う場面だったのか。続く「夕暮れのTVセット」などはもう支離滅裂で脱力感しかないが、しかし中盤の月の場面になると変に物悲しい雰囲気になり、これは意外に真面目な映画なのかと一瞬思わされる。
後半になっても映像的には凝ったようでいながら大して盛り上がらないまま終わってしまうが、それでも素っ気ないエンディングの背景音楽が哀愁を帯びた感じで余韻を残すので、それなりの映画を見た気分にさせられてしまう。なお開始直後にエンドロールの巻き戻しのようなのが出ていたのが、むかし起こった出来事の回想をこれから始める、という意味だったとすれば、少なくとも映画公開の時点ではまだテハンノにいたということかも知れない。
こんな映画を褒めるわけにはいかないが、なかなか愛嬌のある感じで嫌いともいえない。
ちなみに自分としても「万」の単位が何なのかは気になった(当時も今も1円≒10ウォン)。また女子高生がセーラー服のようなのを着ているのは、もしかして日本統治時代から続いている慣習だとすれば、いわゆる「日帝残滓」であるから徹底的に攻撃して排除すべきではないか。