1.チャップリンが編集したオリジナルは2巻物(約20分)だったが、彼のミューチュアルへの移籍後にエッサネイ社が4巻物に水増しし、「でっち上げた」のが現行のバージョン。
(チャップリン自伝)
つまり、映画の約半分は監督チャップリンの不服とするNGショットだ。
この苦い経験もまた、後に彼の完璧主義を形成していく一因となったのだろう。
確かにジプシー側の描写の多い前半部分などは活劇性も薄く、
人物の出入りを繋ぐ編集テンポも悪い為、短い時間を長く感じてしまう。
一方で、オリジナルからあっただろうショットもその充実ぶりからある程度察しがつく。
テーブル上でジプシーのダンスを踊る艶やかなカルメン(エドナ・パーヴィアンス)。モブシーンの猥雑とした活気。
邪魔が入って彼女となかなかキス出来ないチャップリン。
剣戟のコミカルで秀逸なアクション等々。
身も蓋もない云い方をすれば、彼の終生のパートナーともなるエドナ・パーヴィアンス
との仲睦まじい絡みの全般であり、
自身の渾身のギャグシーン全般だ。
その釣瓶打ちとなる後半は、一気に映画を盛り返している。
バ―レスク(文芸作品のパロディ)とはいえ、悲劇「カルメン」の喜劇化それ自体が
ラストのオチも含めて無理矢理感いっぱいだが、
ラストのツーショットで見せる二人の笑顔は幸福感に満ちて感動的だ。