1.筆書きみたいなやわらかい描線のほんわかしたアニメーション・・・。かと思いきや、結構重い内容ですよこれは。人間であることを完全に捨て去ることを望む主人公。子供を取り戻すことに全力を尽くすが,いざ取り戻したら鎖で繋ぐ両親。帰すべきだと分かっていながら,帰す事を頑なに拒み命をも失う母熊。う~ん、重苦しい。イヌイットの神話を元に、舞台を現代に移していますが,その必要性はなかったんじゃないかな。アレが昔ながらのイヌイットの村であったって、何の不都合も無かろうに。さて、全篇における花というべき存在は,山の精霊です。「まんが日本むかしばなし」のまぬけなお化けと水木しげる描くところの細密画風精霊の合体のような独特なスタイル。オープニングと劇中に登場する左右に走り抜けるアホみたいな精霊が、たまらなく素晴らしい。動物の姿を次々にとり続けるなど,アイディアも秀逸。精霊だけでも一見の価値あり。そして、全篇に流れる音楽。民族楽器を絶妙に取り込んだ見事なものに仕上がっています。