1.《ネタバレ》 「サンダウナー」っていうのは、後半出てくる競走馬の名前。映画史的に殆ど語られる事がない映画だけに、地味な佳作かと思いきや、とんでもない。家族、親子の愛、夫婦の絆、仲間達との絆、オーストラリア大地の雄大な景観、飛び交う羊たちの群れ、メルボルンカップ、山火事スペクタクル・・・と、内容てんこもり盛りだくさんの御馳走映画でした。しかし長編小説のダイジェスト映画版などでは決してなく、きちんとした一個の映画作品として成立しているのは名匠フレッド・ジンネマン監督の力量と演出の巧みさによるもの。この監督の作品に出演する事が、アカデミー賞受賞への近道と当時から言われていたようですが、この映画でも、各々の役者から好演技を引出し且つ、個性を損なうことなく画面に生きている人間像として観客に納得させてくれる、ホント素晴らしいと思う。奥さん役デボラ・カーの演技巧者っぷりは、これまで観た作品からも当然だと解ってはいましたが(意外な色っぽさもここで引き出され6度目最後のアカデミー賞ノミネーション)、定住嫌いの旦那役R・ミッチャムがここまで良い役者とは。三回目の共演作とあって呼吸もピッタリ。映画を観終わって即思い出したのは、昔観てたアニメ「マンガニッポン昔ばなし」のED「いいな、いいな、人間っていいな~」のテーマ曲。過去の諸作に比べ若干緻密さには欠けるものの、この作品はジンネマン監督流の「人間賛歌」。タイトルが原題も含め複数系なのも納得。