1.『ウィンチェスター銃’73』見たとき、ダン・デュリエの悪漢がよかったので、彼が出る映画を待ち伏せていたら本作が放映された。列車強盗団のリーダーで『ウィンチェスター銃』のときよりネチっこさは欠けたが、いるだけで嫌らしさが匂い立ってくるような下卑た笑いは、やはりいい。目的がそちらのほうだったので話は二の次に見ていたが、J・ステュアートがアコーディオン弾いて歌ったりアップルパイ注文したり、“おいら陽気なカウボーイ”って話なのかと最初はビビッた。しかしそれは世を忍ぶ姿で、正義に燃える男なのだった。『ウィンチェスター銃』も兄弟の確執が潜んでいたが、これもそうで、西部劇ではよくある設定なのか。よかったのは鉄道風景、谷の脇の崖を走っていくあたり堪能した。安い客は、剥き出しの貨車のようなところで運ばれるのだ。列車強盗ってのは、汽車とそれに追いつく馬と銃があって、西部劇の主要要素が凝り固まっている。給水塔を倒して列車を停めるスペクタクルもあるが、終盤精錬所で争い、女性がロープウェイ状の運搬機に乗って空中を逃げるってのがあった。逃げ出すところまでしか映さないのだが、その後を丹念に追えばスピルバーグ的な場面になる。スピルバーグも若いころこんな映画をたくさん見て抱いた欲求不満を、自作で解消していったのかもしれない。