1.トルクメニスタンは旧ソ連邦ではあっても非あるいは反ロシア的な風土で、そのエキゾチックな砂漠の大地にロシア的な美貌のアレクセイ・アナニシノフが立つだけで、終末をテーマにした一枚の絵画のようです。この主人公を演じる青年の美しさが尋常ではなく、奇跡的なほどに感じられるのが、色々な意味でこの映画のアブナいところです(笑)。宗教や民族の問題など、ロシアとその周辺の複雑な歴史が背景になっているので、この終末のイメージをロシアの人達と同じように共有することは難しいのですが、生気の無い子供や、撃たれる脱走兵、去ってゆく異民族の友など、次々と主人公のまわりで起こる幻のような出来事が、あたかも未来からの警鐘のように心の不安を呼び覚まします。「色」が人為的に加工された画面が特徴的で、この作品の茶色がかったオレンジ色は、熱気でもあり乾燥でもあり、警告の色でもあり、生命の色でもあってと、様々な表情を見せています。ソクーロフ監督のなかでは『静かなる一頁』と並んで好きな作品です。