2.前半の稲穂と田んぼに関する徹底検証。
これがまた物凄く手がこんでいて、やたらにリアルな模型や、丁寧な仕事で作り上げた図表などが次々と出てくる。
もう稲穂の話なんてどうでも良くて、その説明に使われる小道具に目がいってしまった。
ただ、この稲穂に関する検証は、同じく小川紳介監督の『1000年刻みの日時計 牧野村物語』で散々しつこく見せられた経験があるので、観ていて何ら新鮮さもなく、しかも延々と冒頭から1時間くらいかけて語られるものだから、苦痛以外の何物でもなかった。
ようやく苦痛の稲穂解説パートが終わると、村人たち個々人の生活や昔話の取材へと趣きが変わる。
ここからが面白い。
村人たちの話は、昔話ながら実に新鮮で、私が見聞きしたことのないような話を、昨日のことのように実感をこめてカメラに語りかけてくる。
辛かった炭焼きの仕事の苦労話や、蚕で生計を立てるまでの話、村が盛っていた頃に村をあげて行われた花火大会の話、戦争の体験談など、次々と出てくるエピソードは聞いていて実に重みのあるものだった。
200分を超える為、途中しんどくもなったが、観終えた後の気分たるや、映画を観て久しぶりに得られた満足感であった。