1.《ネタバレ》 唐の時代。ここに“十三太保”と呼ばれ、世に恐れられた十三人の義理兄弟がいた。彼らには素晴らしい才能があった。大勢の兵を率いることも出来た。兄弟の結束も絶対であった。進むべき道はすでに見えていた。天下の統一、即ち皇帝・黄巣の首を討ち取ること。それは彼らにとって容易い事のはずだった。
しかし、彼らの進む道を光が照らしたのはほんの一瞬だけ。
矢を放とうにもそれは外れ、そして二度と見えてこない。
絶対であったはずの兄弟の絆。光を見失い、憎悪や嫉妬という心の闇が彼らを蝕み始めたその時からそれは脆くも崩れ、彼らは“天下を統一する”という大きな争いから“手柄を立て兄弟の王になる”という小さな争いに身を投じて行く。
広大な中国。その全てを統一するということ。敬思や存孝ほどの才能に溢れた人物でさえもそれは果たせず、それ以前の小さな争いの前に尊い命を散らしてしまった。勝ち続けること、それは才能だけではなく、大勢の軍隊だけでなく、あらゆるものが揃っていなければならないのかもしれない。天下への道のりはそれほどまでに険しい。
映画を見終わり、邦題を読み返した。
『英雄十三傑』
なんと皮肉な・・・。
真の英雄などここにはいない。
この物語は“英雄になり損ねた者たち”がいるだけなのだ。