1.必死に働いても一向に生活が向上しない労働者、結果を出してもボーナスではなく無価値な勲章が与えられるだけ。“人殺しさえしかねないような催眠術”(与えられたことをただ遂行することしか出来ない現状の皮肉的暗喩)で労働者をこき使う企業、ひいては国への批判が詰まった作品。1965年当時のユーゴスラビアは言うまでもなく社会主義国家ではあるが、独自の自主管理方式(経営責任者と労働者が一体となって意思決定をする経済方式)を導入していた。マカヴァイエフは実質経営責任者や国の一存で意思決定がなされている現状の歪みを“なんと呼ばれようが問題は中身”という台詞に込め、伝えようとしたのだろう。細部の荒さはあるが、恋愛における男女間の力の差となぞらえながら社会風刺作品を作り上げた手法は大変秀逸。たいへんよくできました。