1.《ネタバレ》 70年代前半に2枚のアルバムを残してあっけなく解散したニューヨーク・ドールズなのですが、今から考えるとこれって同種の音楽ではずっと早い時期だったし、またグラム・ロックとパンクの架け橋としても重要なバンドでした。そのドールズというよりも、ベーシストのアーサー・"キラー"・ケインに一点集中したドキュメンタリーです(よって、タイトルが単数なのも多分意図的です)。解散後には30年近くにわたってまったく目立たない窮乏生活をしていたのですが、モリッシーが企画した2004年のイベントでの再結成ステージに誘われます。そこで、質に入れていたベースも取り戻し(!)、また長年冷えた関係だったデヴィッド・ヨハンセンとも和解します。その中で、最初はうらぶれたオッサンだったアーサーが、輝くステージ・ミュージシャンとして再生していく過程は、なかなか感動的です。しかも、撮ってるときは誰も思わなかったのでしょうけど、その再結成ステージの約1か月後には、アーサーは急逝してしまいます。その意味でも貴重な映像です。もっとも、再結成をきちんと意義づけるためには、まず70年代当時の映像がもっとなかったのかな、とも思いますが、活動歴が短かったバンドだから、まあ仕方ないか。それと、インタビューでイギー・ポップとかクリッシー・ハインドとかミック・ジョーンズまで出しているんだったら、あんな細切れコメントの連打ではなくもっとまとまった編集ができなかったのかと思いますが、そのスピード一直線な作り方も、それはそれでパンキッシュとは言えるのかも。