1.《ネタバレ》 『地球で最後のふたり』は私にとってマイベストな映画。
その『地球で最後のふたり』と同じ監督、同じカメラマン、同じ脚本家、そして主演も同じ浅野忠信で撮られた本作。
『地球で最後のふたり』で感動し、「次回作も同じスタッフで撮る」というニュースを入手してから待つこと、実に3年余り。
監督がペンエーグ・ラッタナルアーンで、撮影がクリストファー・ドイルで、原作・脚本がプラープダー・ユンで、主演が浅野忠信。
この『インビジブル・ウェーブ』という作品を観るために、私は3歳も歳を取ってしまったのだ。
冒頭で、“ボス”の妻を毒殺した浅野忠信は、“ボス”の手配した船に乗って、香港からタイのプーケットへと渡る。
ここからいよいよ、私の大好きな“ロード・ムーヴィ”のはじまりはじまり。
えらい汚い船で、何故か人気(ひとけ)が感じられない。
誰もいないのだ。
間接的に窓の向こうに人影が見えたり、部屋を船員などが訪れたりはするが、基本的に浅野忠信以外の人間が出てこないのだ。
これがとても気味悪く、奇妙な雰囲気を演出することに成功していた。
あ、そういえば、エレベーターの中でも浅野忠信の旧友と名乗る奇妙な日本人男性と遭遇したっけ。
ここでの浅野忠信の振る舞いやリアクションがとても良かった。
別に普通に聞いてる分には、特別、面白くもない会話なのだが、浅野忠信のリアクションが面白かったのだ。
この辺りは浅野忠信ファンでないとなかなか理解してもらえないところなので、詳細な説明は割愛させて頂く。
逆に、浅野忠信ファンならば、この奇妙な男性に対する浅野忠信のとぼけた対応に注目すべし。
これを演じた浅野忠信、そしてこれを演出したペンエーグ監督はさすがのセンスである。
そして音楽。
『地球で最後のふたり』と同じ感じの音楽が本作でもずっと流れ続ける。
同じ感じの音楽なんで、おそらく同じ人が音楽を担当したんじゃないかと思う。
静かなBGMだったが、ペンエーグ監督とドイルが描き出す世界観に見事にマッチしており、これまた最高であった。
ロード・ムーヴィちっくなところも良かったし、ドイルの撮ったアジア各国の映像美も感動したし、浅野忠信の魅力も十二分に発揮されていた久しぶりの作品だった。
ただ、ストーリーにそれ程の厚みはないし、話も淡々とゆっくり進むので、人によっては退屈な映画に感じてしまうかもしれない。