1.《ネタバレ》 何てスローな映画なんだろう。
最初のコンサートシーンといい、場面の切り替わりで挿入される昼夜のパリの風景といい(ひとつの風景がやたらと長く映し出される)、そして、クライマックスの食事のシーンといい、そんじょそこらの映画監督じゃ絶対こんな映画作れない。
クライマックスと言うのはさすがに大袈裟かもしれませんが、二人が席について食事を始めたときの、独特の雰囲気の漂うあのワンショット。食事が始まって向かい合う二人が映し出された瞬間のあの例えようのない雰囲気は何なんだろう・・・。しかも、延々と続く長回しも実に面白い。あたかも、この場面に辿り着くために映画が進行していたかのような気がします。
ストーリーに話を移すと、この作品が提示する、前作「昼顔」での謎は以下の2つ。
ユッソンはセヴリーヌの夫に彼女の秘密を明かしたのか、明かしていないのか。
約40年前、娼館に来た東洋人が持っていた箱は一体なんだったのか。
観た方ならお分かりの通り、どちらの謎も解けないままで映画は終了するのですが、謎が解けないまま幕を閉じるのが勿論ベスト。
前作も今作も同様、映画の中で起きた謎というのは、見る人の解釈に委ねられるべきだと思うから。
では、この映画の存在意義は?
あの鶏の意味は一体・・・。
こうやって謎解きに苦しんでいる我々を見て、オリヴェイラ監督は不敵な笑いを浮かべていることでしょう。
けど、ここまで、前作を知らないと物語に入れない内容も珍しいのでは、とも思います。
映像的な演出は、芸術の域に入るほどですが、ストーリー重視で映画を見る人にとってはかなり冷めた映画として映ることでしょう。
「箱に興奮する」とか言われても・・・。前作を見ても解りづらいのですから。