1.序盤の、運河をゆるやかに渡る艀のショット群の何という瑞々しさか。
船上で料理をするカトリーヌ・エスラン。
その後景を、揺らめく水面と岸部の並木が流れていく。
以降も、さまざまにロケーションを変えて登場する水辺の情景が素晴らしい。
燃え盛る炎や流れる水、風に揺れる木々のみならず、
アヒルや犬や白馬など、動物たちのアドリブを活かした画面がまさに
伸びやかで生きた瞬間瞬間を掬い取る。
中盤のトリック撮影の奔放で自由なイメージの何と力強いことか。
白馬の疾走と共に、凸面鏡に反映させた木々が荒々しいスピード感で流れていく。
飛翔し、落下する娘の白い衣装がスローモーションによって官能的にはためく。
随所に挿入される縦移動のショットも、いかにもルノワールだ。
実質的な処女作だけに、原初的な衝動といったものがあらゆるショットに横溢している
。