104.《ネタバレ》 社会派ドラマとして見ると痛い目に会うというか肩透かしを食らいます。
「チェック、ダブルチェック」を旨とする主人公が大事故の全権デスクを任されたタイミングで同僚の入院や部下の死が重なり自分を見失いかけながらも奮闘する物語なのですが、中身はスッカスカです。
情況描写は非常に上手いのですが本来それを支える作品のテーマや主人公の信念といったものが見えて来ません。
スポーツの試合を一試合最後まで見届けて勝敗や内容を堪能すると言うより、同じ時間で好プレー珍プレー集を見せられた感じです。
特に作品のメインとなる圧力隔壁のスクープの掲載判断を迫られる場面等は醜悪です。
フィクションとはいえ毎日新聞が抜いたスクープを覆すような安い脚色にしないのは当然ですから話の落とし所は最初から決まっているので、判断結果ではなく判断理由を克明に表現すべきなのにほぼ出来ていません。
あれでは主人公が慎重というより次長の言う通り腰が引けたといった感じに見えてしまいます。
その後の辞表提出のタイミングにより主人公が「コネ入社のキレやすいビビリのダメ社員」という印象になってしまいました。
こうなってしまうと本作が何を表現したいかが全く解らなくなってしまいます。
しかし、役者さんの演技や個々の演出にはかなり魅せられます。
田口さんを除くほぼ全ての登場人物が肉食系といった感じです。
そんな彼等のバラバラの利害を絡めてカオス寸前の北関東新聞社を見ていると、こちら側にも緊張感が伝わってきます。
事故の遺族や関係者の方には不謹慎とも取られてしまうかもしれませんが大事故が起きて色めき出す新聞社内や配慮のない社員の言動等には説得力が有り作品としては好感が持てます。
記者の葬式の後に短く差し込まれた所以外は音楽や話の内容をオーバーラップさせながら見せる登山シーンもそれなりの効果を出せていたと思います。
右脳にとっては良い映画だったかもしれませんが、左脳にとっては退屈な145分になってしまったと思います。
作品を通して役者さん達の高い熱量の演技を維持させる演出は見事なので原田眞人さんは監督業に専念して脚本は外注した方が良いのではないかと思いました。