1.《ネタバレ》 男くさい作風のロバート・アルドリッチがなんとレズビアンがテーマの映画を撮っていたとは、しかも生前「自分が撮ったもっとも好きな作品」と語っていたとは驚きです。原作は舞台劇で、イギリスのTVドラマ制作現場での人間関係がプロットになっています。主演は舞台と同じベリル・リードで、人気連続TVドラマの脇役を長年演じているおばさん女優という役柄です。たとえると、『渡る世間』の泉ピン子と言えば判り易く、下品なところもよく似ています。このおばさんがレズビアンで、スザンナ・ヨークと同棲しています。本作はB・リードとS・ヨークが演技合戦を繰り広げるシーンが続くのですが。S・ヨークが予想以上の好演を見せてくれるのが意外でした。レズ描写も結構濃厚でベビー・ドール姿からヌード・シーンまであります。B・リードはあまりの不品行ぶりがたたって番組をおろされることになるのですが、オファーされた次の仕事は子供番組の主人公(牝牛)で、声優をやれと言われて荒れ狂います。舞台劇は映画化するのも結構テクニックが必要ですが、本作は必ずしもそれに成功しているとは言えないでしょう。舞台と同じキャストを起用するとどうしてもオーバー・アクトに陥りがちで、本作のB・リードもほんと暑苦しくてむかつくおばさんとしか見えません。アルドリッチの演出も『何がジェーンにおこったか』のベティ・デイビスを引きずっている感じがしました。ラスト、無人のスタジオでセットをぶち壊して暴れまくったB・リードが、「モー・モー」と牛の鳴きまねをしながら泣くシーンは、さすがに哀れを誘います。