1.DVD版の上映。
菊川慶子さんが育てているチューリップ畑の赤・黄・ピンク・紫などはほぼ純色に近い彩度の高さで画面を彩る。
彼女が鍋に押し込む青菜の緑と強い弾力、そして温かそうな湯気は食欲をそそる。
幼稚園児たちが笑顔で齧る有機栽培トマトの鮮烈な赤も素晴らしく眼に沁みる。
淡い水色の空に架かる黒い送電線。
カメラがパンダウンしていくと、苫米地ヤス子さんが無農薬有機栽培している黄はだ色の稲穂についた水滴が瑞々しく輝いている。
掘り出された山芋に着いた肥えた土の豊かな黒に、水揚げされたイカの飴色。
それらは、東北の「見えない汚染」が現実的な今、かけがえなく切実な彩りだ。
映画のコンセプトは、「反対派も、推進派も同じスタンスで」「偏りなく」「矛盾も含めてありのまま」映し出すことだという。
が、映画のなかで、苫米地さんが語るように、「中立」はあり得ない。中立は容認であり、賛成でしかない。
映画も対象を選択し、フレーミングによって取捨を迫られる。
この豊かな自然物の色彩と、村民の淡々と柔和な表情こそが、映画の強い主張だ。