1.「U2/魂の叫び」は「ヨシュア・トゥリー」(87)の映画だったけれども、これは次の「アクトン・ベイビー」(91)に関する映画。 2011年のグラストベリー・フェスティバル会場から始まり、20年の時を遡る。 「ヨシュア」の巨大な成功を受けての次作の製作は楽ではなかったはずで、イーノとラノワの指揮の下ベルリンの空の下で試行錯誤を続けるメンバーたちの曲作りの過程、当時を振り返るメンバーの語り。 「WAR」以降彼らのジャケット写真を撮り続けるアントン・コービンも姿を見せ、「魂の叫び」撮影時のフッテージや懐かしくも奇抜なZOO TVツアーの映像も挿まれる。 タイトルはボノによる「空から降ってくる言葉」、メロディという言葉を編んで生計を立てるコンポーザーの人生の不思議を謳うものか。(監督デイヴィス・グッゲンハイムは「ゲット・ラウド」(08)でもエッジの言葉からタイトルをつけていた) 90年代のエレクトリック三部作の最初にして最も良質な作品である「アクトン・ベイビー」(続く「ZOOROPA」と「POP」は自己満足的でやや精彩を欠く)の舞台裏レポートとしての魅力をそなえ、彼らの女装やアニメなどの「余興」はあるものの、総体的に質素でファン向きであり、それだけにエンド・クレジットでの再度グラストンベリーでの「リアル・シング」がレイアウトも含めて一段と鮮烈には映るのだけれども。 これほどの成功を収めながらU2がロックバンドとして異質な感じがするのは、ダーティなイメージとは無縁だからだろうと思う。 「アクトン」に始まり2000年の「オール・ザット・ユー・キャント・リーヴ・ビハインド」で原点回帰するまでの享楽的なイメージもステージという舞台で演じられる演目にすぎず、彼らの誠実さには変わりがないことを大衆は知っていて親近感を持たれ続けるのではないだろうか。 (U2へのエントリーは"18 SINGLES"がいいかも!)