2.《ネタバレ》 映画「王将」で主人公の坂田三吉を演じるのは、坂東妻三郎、辰巳柳太郎に続き、名優・三國連太郎。
そして、三度とも伊藤大輔監督が撮っていて、坂田三吉に惚れ込んだ、伊藤大輔監督の執念に驚かされます。
この「王将」は、とても古風な映画だと思います。
天才棋士・坂田三吉(三國連太郎)が、ライバルの関根七段(平幹二朗)との対局で、苦し紛れに二五銀の奇手に出、娘(三田佳子)にそれを非難されて怒り狂い、やがて"銀が泣いている"と自ら泣き、たいこを打ち、題目を唱えながら波に洗われるシーン、関根名人就任の祝いの席から危篤の妻(淡島千景)を電話で励まし泣くシーン。
それらを伊藤大輔監督は、思い切り押しまくり、それに応えるかのように、三國連太郎も激しい演技で演じ、その熱意が画面を圧倒します。
その迫力たるや凄まじいものがあり、三國連太郎という役者の凄さ、狂気をはらんだ芸の奥深さに唸らされてしまいます。
作り方も人物像も確かに古風ですが、この無学の天才棋士の人物像は、人間ドラマの主人公として完成されたものと言うことができると思います。
映画を観る大きな愉しみの一つは、こうした鮮やかな人間像に出会うことだと再認識しましたね。