1.《ネタバレ》 同日に催されることとなる、将来を賭けたデビューコンサートと家族のコンサートとの挟間で引き裂かれる青年のドラマとなれば、古典『ジャズ・シンガー』(1927)まで遡る音楽ものの定番的なプロットである。
その『ジャズ・シンガー』の潔いラストと比べて、演奏シーンにフラッシュバックを俗に絡め、舞台上の家族の笑顔と観客席の拍手であまりにも型通りに締めて良しとする安易で、くどく、大甘で、観客に媚びたラストは、『スイングガールズ』や『フラガール』以降の退行的慣例とも云えよう。
浦安市のドラマでもあるこの映画、ロケーションの選び方も、エキストラの用い方もどこか画一的・排他的で街の印象が非常に薄い。震災直後のクランクインでありながら、被災の光景を復興と再生のドラマにリンクさせないのも官僚的で勿体無い。
良かったのは、コンサート会場にやってきた高杉真宙のかじかんだ手を鶴田真由と剛力彩芽が両側からさすって温めてあげるショット。そしてその間、細川茂樹が間をもたすために壇上で語る昔話のシーンで、湖を飛び立つ白鳥を捉えるショットの美しさだ。