1.《ネタバレ》 あの大蔵貢が社長になる前は、『戦艦大和』を観れば判るように、新東宝の戦争映画には独特の暗さと厭世感に満ちていました。潜水艦の戦いを描いたこの映画も、ヒーローとして活躍するような登場人物は一人もおらず、艦長以下乗組員はみな家庭や恋人に後ろ髪をひかれる様な思いを残して出撃して、淡々と散ってゆくのです。 随所に潜水艦内の実写映像を使用しているのがモノクロ本編に良くマッチしています。ただ艦内のセットは低予算の悲しさであまりに大雑把過ぎて実感を損ねています。旧海軍の潜水艦はUボートに比べて大型だったにしても、潜水艦内の閉塞感がまるで表現されてないのは残念なところです。もっと致命的なのは戦闘シーンにおけるミニチュア・ワークにまるでスケール感がないところで、安物の潜水艦プラモデルをマブチ水中モーターで走らせている様な映像は、もう自主映画レベルです。同じ年に東宝では『ゴジラ』が製作されていることを考えると、もうちょっと何とかならなかったんでしょうか。