1.《ネタバレ》 「マンホールの中の人魚」という美と酷を表したタイトルのセンスが光る。
奥さんが出て行った孤独な画家。
彼は一人、マンホールの下にある下水道でひっそりと様々な幻想に浸る。
その下水道にはかつて男が遊んだ綺麗な川があった。
そこには男が失ったもののすべてがあった。
そこで男は美しい人魚に出会う。
人魚は汚水のために病気になっていた。男は自分の家でその人魚を看病することにした。
人魚は画家に自分の姿を描いてほしいと懇願するのだった。
やがて禁断の人魚の飼育がはじまる?といったなんとも都市伝説風味とゴシックロマン?漂う物語。
ここまでは。
家のバスタブで人魚を飼育する妙にエロスな光景は束の間だった。
徐々に人魚の病気は進行し、バスタブの中で美しい人魚の姿が腐ってゆく様の恐ろしさ。
それは憧れの破壊である。
腫物は全身に広がり、虫が皮膚を這いまわり、うずく腫物から続々と虫が湧いてくる。
吐血し、虫のゲロを吐き、断末魔の叫びとともに体をのけぞり全身から膿を噴き出す。
抜けかけた毛を振り乱し肥大し腐った目玉が飛び出る。
無数の虫!虫!虫!
そのグロさ、そのおぞましさたるや世界一!
これぞまさにジャパニーズキチガイ人魚伝説。
それはなんとなく手に負えない珍しい動物を飼うときの不安と恐怖に近い。
(ちょっと前に読んだ日野日出志の漫画「地獄のどくどく姫2巻」の内容と少しだけかぶる)
おぞましい膿やただれた皮膚の表現は人間が川に流した生活排水によるものとして描かれる。
恐らくこの映画の人魚は破壊されゆく自然の象徴なのだ。
下水道がかつては美しい川だったころの風景画と並行して人魚の腐敗が描かれてゆくのは、
環境問題の提起でもあると感じる。
昔の思い出や美しい風景が崩れてゆく様を人魚の腐敗で表してるのだと思う。
狂気を漫画で描かせれば右に出る者はいない
日野日出志のキチガイグロ表現にかける情熱は映画でも本物。
この映画を超えるグロテスク、他の映画になし!といっても全くの嘘にはならないはず。
グロさだけでいうとこの作品は神がかってる。
ちょっと蓮コラを思い出した・・・
さて人魚の正体とはいったい?はたして結末は・・・
この作品はギニーピッグの中でも傑作のにおいがする。
しかし絵具まみれの虫の大群は見るのもキツいし、虫だって気の毒だと思う。