1.《ネタバレ》 主人公は61歳のカナダ人男性。離婚し、教員を退職し、大事な友人を失くし、これからの生き方が見えない。そういう人が、セミナーで訪れた沖縄を巡るうちに癒されている自分に気付き、ここに住もうと思い始めるまでを描いています。私も1年ほど前に沖縄へ移住してきたもので、テーマ的にも映像的にも興味深く観ました。
主人公の移住動機がガツンと響かないことに不満が残りました。「移住」に説得力を持たせるためには主人公の過去描写が不可欠ですが、本作は主人公の背景を回想映像などを挟まず本人に台詞で語らせます。そこが映画的にはかなり薄味です。主人公と共に旅する主婦(=工藤夕貴)の家庭問題の方が分かり易くて、そちらの解決の達成感が勝っていました。
沖縄に住む者には見知った場所が次々に映るだけで嬉しいのですが、一般的な沖縄映画らしい色彩も希薄でした。ロケが行われた時期が沖縄的には寒い季節で、陽光を感じない絵が多いのです。観光ムービー的な趣きを排除するための配慮かも知れませんが、南国らしい魅力が見えるに越したことはないという意見です。それが沖縄の絶対的な資産だと思っていますから。
イメージしても実行する人が少ないのが「移住」だと思います。身軽が前提になりますが、本作ではかなり追い込まれた末のアクションという描写でした。「移住」だけ関しては、もう少しハードルが低くてもいいんじゃないの、というのが個人的意見です。私は暖かいというだけでかなり満足しています。