2.《ネタバレ》 凄い映画だった。
ストーリーは問題を起こした“子供”なら小学生だろうと大人だろうと送られ集団生活をさせられる学園の話。
浮浪や盗み、怠け者など問題児を一緒に生活させて更生していこうというものだ。
映画は1941年と戦争も近い筈だが、非国民がどうとか戦争のプロパガンダとかそんな要素は微塵も感じられない。
集団で社会的な学習をさせ、子供たちに自分の長所や短所を見極めさせるなど興味深い。
つうか「寝ショウベンの統計」って(笑)
教員も擬似的な父親・母親となって家族のように教えていく。
仕事が忙しいので託児所の代わりにする親も入れば、自分の不始末を人任せにしようという無責任な親も出てくる。
育児放棄も同じだ。
今の我が子に過剰に愛を注ぐ「モンスターペアレント」とこの映画の親たち。一体どっちが酷い親だろうか。
どんな事情があれ、俺は両方ともクソだと思うよ。てめえの不始末他人に押し付けるような親はな。
まあ俺も最初こそ「悪い刷り込み」を感じた。
塔に入ったばかりのお嬢ちゃん育ちの女の子と一緒の気持ちだった。
だがそんな考えは次第に薄れる。
子供たちはみんな活き活きしているし、厳しいけど個性を尊重する辺りなどある程度のびのびした感じだ。
また、卒院しても社会に打ちのめされ戻っていくる生徒の様子も良かった。
塔を見る世の中の冷たい現実、そんな現実にまた戻り挑み直そうとする場面。
笠智衆の先生の言葉も良い。
「世間に負けないように強くなれ。ここで培ったことを忘れるな」逆境に負けるなという教えが感じられる。
水を引いていく力強い場面はキング・ヴィダーの「麦秋」を思い出す。
言葉には言葉、拳骨には拳骨で応える。
拳骨の後に抱きかかえて励ます姿勢がグッド。これが本当の愛のある拳骨や。
「蛍の光」は思わずうるっと来てしまう。
鐘の音はちょっと拍子抜けしたが、去っていく生徒たちの希望と不安を感じさせるシーン。
横を走る汽車も、この数年後には戦地に行く兵士たちを乗せて走っていくのだろう。
戦争を知る前と知った後じゃ印象が違うラストだ。