6.《ネタバレ》 主演女優はいつまでたってもきれいで可愛らしい。子役には申し訳ないが大人状態の方がずっと愛らしく見えており、劇中の人物像としても聡明で健気なのが愛おしく感じられる。また出番は多くないが、独身時代の義母(演・荻野友里)も何気にいい感じで泣かせる顔をしてみせている。それから何といっても泣かせるのがレシピのビジュアルで、素朴でユーモラスな図柄や文字は見ているだけで泣けて来る。
ところで、これを見てから原作を読んで確認したが、劇中で心を動かす要素の多くは当然ながら原作由来であり、一方で映画化の際の問題点が目につく。
まず映画では主人公の伯母が、これはもう早々に世を去ってもらうよう願うしかない、という類の人物に見えていたが、それが終盤で突然“ほんとはいい人”に大変身する展開には呆れ果ててしまった。原作ではそれほど変に思われないので、これは映画の方の演出や、細かな人物描写の省略が原因と想像する(入水を止めただけでは説得力なし)。加えてハワイアンも意味不明のため、この場面が続けば続くほど違和感が拡大して、映画全体の価値が低落していく結果になっていた。
また「テイクオフボード」の考え方自体は結構だが、こういうのはある程度の年月をかけて、現状の追認を含めて得心していく性質のものである。そのため映画のラストで、主人公がいきなり具体的な解決方法を導き出したように見えるのはかなり不自然だった。ストーリー中でもこれに向けた伏線を準備していたようだが、こういう安易な結末を導くためだったかと思うと落胆する。当事者の心情などお構いなく、手っ取り早く形だけ整えて決着を付けたようなのは反感さえ覚える。
そのほか現在の父親の人物造形に問題があり(結婚当時の方がまだ自然)、またローマ字の裏返しをこんな風に半端に扱うくらいなら全削除の方がまだましだ、といった不満が多数ある。いい原作を採用し、いい役者を揃えたようではあるが、いい映画とはいえない出来だったのは残念なことだった。
ちなみに原作は、感涙どころでない爆涙小説である。読む人の年代にもよるだろうが、自分としてはかなり手ひどくやられてしまった。