1.アナログレコードの音楽に合わせて踊る、トム・ヒドルストンとティルダ・スウィントンの俯瞰ショット。
ソファの上で弾むように脚を組み替えるミア・ワシコウスカの仕草。
静かな映画の中で、それらの滑らかな運動感がアクセント的に心地よい。
途中、そのミア・ワシコウスカの闖入によって館が三人所帯となることで
ジャームッシュ流の移動の映画=ロードムービーとなる。
彼女の登場は、移動を促す契機としてあると云っても良い。
遠くに街の灯が散らばるデトロイトの寂れた夜道。
まばらな明かりの中に浮かび上がる廃墟の群れが、街の盛衰を偲ばせる。
勾配が特徴的なタンジールの石畳の路地。
黄昏のような、艶を帯びた妖しげな光の加減がエキゾチックで素晴らしい。
ランプを光源とした屋内シーンの見事さも見逃せない。