2.《ネタバレ》 コンゴ民主共和国(旧ザイール)の恐らく東部で、武装勢力が跋扈して悲惨な状況になった地域の話である。前半で出る「コルタン」というのは現地に産出する鉱石で、現代ではスマートフォンなどに多用されるため、劇中の武装勢力のようなのが資金源にしているらしい。ここは「ブラッド・ダイヤモンド」(2006)と似たような図式だが、この映画ではあまり突っ込まず問題を示唆するだけにとどめている。また直接関係ない話だが、東アフリカのアルビノに関して少し調べたら気分が悪くなった。先進国や国際資本だけが人類の悪ではないと思い知らされる。
まず序盤で12歳の主人公が武装勢力に拉致されてからのパートでは、その状況自体が非日常で非人道的な上に亡霊がうようよ出たりして、これが本当にわれわれと同じ人間の物語なのかと疑われる。しかし武装勢力から逃れて13歳で結婚(一応は恋愛)してからは人情味も出て笑いもあり、やっと人間の物語らしくなる。その後にまた拉致されて14歳で妊娠させられたりと波乱があるが、最後はまたまともな人間の世界に戻っていく見通しが示されていたらしい。
よくわからなかったのは黒人の黒に対して白が強調されたように見えることの意味である。不気味な亡霊は白塗りで、夫になった少年もアルビノだったが、これは忌まわしいながらも忘れがたいこの時期の、どこか幻想のような記憶を象徴するものとでも思えばいいか。白い雄鶏はありえないと思ったらあったもの、ということだろうが、いなくなった夫が現実の存在だったことの証明にもなっていたかと思われる。
主人公が故郷に戻り、幻想の入り混じった苦い記憶を清算した場面はもしかすると思春期の終わりであって、以後はもう幻想も何もない現実世界が続いていくということなのかも知れない。まだ若いのにとは思うが、そもそもお国柄として早熟にならざるを得ない面はあるのだろうし、今後とも自然体でしたたかに生きていくだろうと思うしかない。最終的には、こんな場所でもわれわれと同じ人間が生きているのだと思わせる映画になっていた。
なお主演女優は現地でスカウトされた素人だったとのことで、当時14~15歳と思うがかなり壮絶な役柄をこなしている。「毒ある花」などというものをローティーンにやらせていいのかと思ったが、映画祭でにっこりしている写真など見るとほっとする。
そのほか各種の歌が印象に残る映画だった。