4.《ネタバレ》 アメリカの小さな田舎町で慎ましく暮らすパーカー家は、偏屈で変わり者の父親と情緒不安定な母親、年頃を迎えた美しい姉妹である長女のアイリスと次女ローズ、そしてまだ食べ盛りの幼い長男ロリーという何処にでもいるような平凡な5人家族。ところが、彼らの周りではここ20年の間に不可解な失踪事件が相次いでいた。ある日、そんなパーカー家の母親が不慮の事故で亡くなってしまう。哀しみにうちひしがれる家族だったが、「こんな状態だが、2日後は〝子羊の日〟だ。いつも通り決行する。これから、これまでママがやって来た役は長女のアイリスに任せる」という父親の宣言の下、彼らはとある儀式の準備に入るのだった。新たに失踪する町の若い女性、かつて自らの娘も失った年老いた医師は、そんな怪しげな家族の真相を探ろうとするのだが……。殺人と人肉食という狂気の伝統を受け継ぐそんなパーカー家の恐ろしい4日間を静謐な雰囲気の中に描き出すサイコ・サスペンス。この奇を衒ったような邦題と、パッケージに書かれていた「注意!この作品には、ショック映像に耐性のある方以外には耐えられない危険な映像が含まれています」との煽り文句に、きっとこれは『マーターズ』系のトンデモグロ映画だと覚悟して鑑賞。なんですが、これがちゃんと撮られた王道のゴシック・サスペンスで、僕のそんな先入観はいい意味で裏切られました。うん、普通に面白かったです、これ。配給会社の「とにかく多くの観客に映画を観て貰わなければ」という思惑は分かるのですが、それでもこの本編とは掛け離れた邦題と宣伝の仕方はどうかと思います。さて、肝心の内容なのですが、これが僕の好みを良い感じでビシバシ突いてくる、全編にわたって不穏で淫靡な雰囲気に満ち充ちたアンモラルな作品でございました。いやー、もうこの一家のとち狂った感じ、なかなか良いですね~。特に、主役である美しい2人の少女が纏う淫靡で怪しげな魅力に僕はすっかりやられちゃいました。長女が森で愛する男と結ばれていたら、そこに唐突に父親のスコップが振り下ろされ娘の胸の上に血がボトボトボトってトコなんかもう監督のセンスが冴え渡っています。他にも、この姉妹が初めての〝行為〟に臨もうと地下室に向かうシーンだとか、このきょうだいが3人並んでベッドに横たわるシーンだとか、随処にデカダンスな抒情性が漂っていて久し振りに次作が楽しみな才能に出会えたように思います。うん、思わぬ掘り出し物でした。それだけにこの奇を衒ったような邦題が残念でなりません。