2.《ネタバレ》 スウェーデンの児童文学作家ルーネル・ヨンソンの「小さなバイキング」を原作としたドイツの実写映画である。日本でも1974~75年にTVアニメが放送されたことがあるが、そのアニメ自体がドイツと日本の共同製作だったらしい。あまり真面目に見ていなかったのでよく覚えていないが、主人公が名案を思いつくと星が飛散する(2回あった)というあたりはアニメ版そのままかと思った。
主人公の名前はドイツ語と英語ではヴィッキー(Wickie, Vicky)で、日本名のビッケは原作のVickeから来たものらしい。また仲良しの少女は本来Ylviという名前だそうだが、この映画の字幕では日本のアニメに合わせてチッチと書かれている。ほか映画の最後にかなり騒がしいテーマ曲が流れるが、どうやら日本以外ではこれを昔のアニメでも使っていたらしい。ほのぼの感のある日本版テーマ曲からするとかなり違和感があるが、この辺は感覚の違いと思うしかない。
内容としてはあからさまに子ども向けファンタジーだが、自分としてはけっこう面白かった。特に序盤は何気に笑わせる演出が多く、また中盤以降はバイキングにつきものの船と海をきれいに映像化しており、船が錨を下ろしたら魚群が避けた、といった少し気の利いた場面もある。そのほかビッケとチッチの2人が本当に愛嬌があって和まされた。この2人がこの映画の最大の功労者だったように思う(父さんと母さんもいい感じ)。
ちなみに苦情を書いておくと、話が荒唐無稽なのはいいとして、最初に1095年(平安後期、宋代)と特定していながら妙な現代ネタを出すのはやめてもらいたかった。Chinese State Circusの大卒金欠女などはアニメにも出ていたのか。こういうのが大人向けギャグのつもりだったとすれば大間違いというしかない。
以下余談として、2018年の大学入試センター試験で、この物語の舞台がノルウェーであるかのような問題があって批判が出ていた。出題者の意図はわかるので正解とされる答えを出すのは容易だが、事実と確定できないことをもとにした設問はやはりまずいだろうと思われる。ただ自分としては、ビッケがスウェーデンの話だったというのはこの事件で初めて知ったので役には立った。この映画では場所がどこだか不明だが(ノルウェーのようにも見えるが)、原作でははっきりスウェーデンと書いてあるらしい。