2.車で旅行中の事故で両親を亡くし自身は記憶を失った青年と、
家族の祖国ブルガリアから彼を迎えに来た祖父との記憶を取り戻す2人旅を描くロードムービー。
事故が起こったあの旅行にどんな意味があったのか。それは作品に挿入される過去が少しずつ明らかにしていく。
青年が幼い頃からの過去の出来事、家族の歴史が頻繁に挿入される。
この家族の歴史は、ソビエトの影響下に置かれた東欧諸国の多くの市民が経験してきた歴史そのものであり、
自由を求めて西側に亡命しても、即自由を謳歌できる暮らしが待っているわけではない。
こうした頻繁な過去の挿入が作品のテンポを悪くし、失敗するケースもあるのですが、本作はそれが本当にうまく機能しています。
そして本作で最も欠かせないのがバックギャモン。正直、ゲームのルールは見ていてもよく分からなかった。
しかし、「人生はサイコロと同じ。どんな目が出るかそれは運と自分の才覚しだいだ。」この祖父の教えが全てを表しており、
2人で力を合わせて故郷を目指しペダルをこぐタンデム自転車の旅そのものが祖父の教えでもある。
その祖父を演じた、巨匠クストリッツァ作品に欠かせない旧ユーゴスラビア出身のマノイロヴィッチの味わい深い演技が素晴らしい。
原題の意味もすごくよく分かるし、この邦題もまた素晴らしい。ロードムービーの佳作です。