1.《ネタバレ》 オマー・シャリフがテムジン/チンギス・ハーン、その妻ボルテがフランソワーズ・ドルレアック、その他のキャストも米英の俳優でチンギス・ハーンの生涯を描くというキワモノ的な映画です。かつてジョン・ウェインがチンギス・ハーンを演じている『征服者』という珍品大作があって余りのひどさに笑いのネタにされていましたが、10年も経って懲りずに同じ様なコンセプトで撮るとはプロデューサーも大した度胸です。オマー・シャリフのテムジンはそりゃジョン・ウェインよりは格段にマシですが、やはりこの時代ならユル・ブリンナーにやらした方が様になってたような気がします。私の想像ですけどこの企画は最初はユル・ブリンナーにオファーがあったと思いますよ、でも彼はクレバーなので断ったというのが真相なんじゃないでしょうか。 ジャムカに父を殺されてとらわれの身となった族長の息子テムジンは、ある日脱走して自分の部族を再興する。勢力を増してきたテムジンは中華王朝の大使を助けた縁で都に行き、皇帝に信頼されてその将軍となって戦う… ちょっと待った、ええそうなんです、実はこの映画は韓流歴史映画の様な史実無視のファンタジーなんですよ。皇帝を殺して部族を統合して世界帝国を築きました、と最後の辻褄だけは合わせてますが、その最期もジャムカと決闘して負った傷がもとで死ぬという独自性に満ち溢れたストーリーです。ユーゴで撮影されたそうですが、自然や地勢がどう見たってモンゴルや中国には見えません。ちょっとチャチなところも有りますが都(北京のつもりか?)のセットや宮廷衣装はそれなりに造りこまれてはいます。合戦シークエンスも名手ジェフリー・アンスワースが撮影監督だけあって見せるべきところはキチンと見せてくれます。脇を固めるのも演技力ある名優を揃えており、中でもジェームズ・メイスンが印象的でした。西洋人が感じている東洋人感のカリカチュアなのか知りませんが、メイスンは薄ら笑いを浮かべた表情で全カットを押し通したんですからね。そしてフランソワーズ・ドルレアック、まさか彼女が金髪のモンゴル人だなんてなんか凄いものを見せられて得した気分です。 でもねえ、チンギス・ハーンが中華皇帝に仕えて「皇帝陛下!」なんて言ってるのを見せられると、もう見続けてゆく気力が無くなってしまいそうでした。