1.《ネタバレ》 こ、これは中々、難解な…流石ロシア………
舞台設定・登場人物は明確で、スターリン末期の1953年2月、混迷深いソ連において、反ユダヤの陰謀に巻き込まれるひとりの将校(軍医少将)が主人公という。しかし、実際の展開運びは意味不明もいいトコロな代物で、解説が無ければほぼ解読不能というレベル。これならいっそ、中途半端にストーリー(らしきもの)が無い方がむしろマシなのではないかと思わせるホド(ストーリーを追うことが無意味ならば、そうだとハッキリ言ってくれれば無駄な努力もせずに済むのだから)。
作中に盛り込まれる演出のモチーフも多様で異様、かつどれもアンマッチである。ひとりでに開く傘、火吹き芸、理由も分からないままに勃発する取っ組み合いの数々…しかし、台詞回しからカメラワークに至るまで各シーンの実際のつくり自体は非常に綿密、かつ確信的であり、何らかの強力なモチベーションに裏打ちされたものであることだけは十二分に伝わってくる。監督にとっては、今作も会心の出来と言ってよい作品なのだろう。満を持して出品された1998年のカンヌでは、審査員長のスコセッシをして「何が何だかわからない」と言わしめたらしいケド。
ちなみにこの風変わりなタイトルは、終盤に実際の台詞として登場する(ただ別に、これも全然重要な台詞でも何でもないんですけどね)。