1.《ネタバレ》 ロジェ・ヴァディムの映画は全部観たわけではないですけど、特徴としてはとにかく“まず女優ありき”をモットーとしているところです。そして意外とオリジナルな脚本が少なく、ゾラやラクロといった古典的な作家の名作を現代に置き換えて脚色したストーリーが多いというとこでしょう。本作は題材をサド侯爵に求めてそのヒロインにカトリーヌ・ドヌーヴを引っ張り出してきましたけど、さて出来栄えはいかがでしょうか。 サドの『悪徳の栄え』と『美徳の不幸』をミックスして舞台をナチ占領下のパリに変更し監督は耽美的な映像が身上、これだけでもワクワクする様なプロットなんですが実は出来上がったのは退屈な凡作でした。正直言ってサド文学の映像化とはとうてい思えない生ぬるさに、「これのどこがサドやねん!」と激怒してしまいました。ナチズムとサディズムはとても親和性が強いと思うんですけど、登場する親衛隊の面々も何がしたいのかさっぱり伝わって来ず、これじゃ単なる“ナチごっこ”を見せられるだけでした。ドヌーヴは確かにハッとさせられる様な美に溢れていますが、まだ若いということを差し引いてもちょっと演技が下手過ぎですね。アニー・ジラルドにしても中途半端なキャラで、彼女のどこが“悪徳”なのか伝わってきませんでした。 後半古城のハーレムみたいなところに舞台が移ってからはかなり支離滅裂な展開で、城をフランス軍に攻められてナチたちとジラルドは全滅しますが、ドヌーヴだけじゃなくハーレムの女たちが皆救出されるというハリウッドも真っ青の超ご都合主義です。 けっきょくロジェ・ヴァディムのサド文学やナチズムに対する理解は、とっても底の浅いもんだったみたいです。