1.《ネタバレ》 在りしの日の、目白にあったとあるレンタルビデオ屋で、オススメされていたので、閉店時に買ってきて、今さらながら観た一本。
このレンタルビデオ屋が推す作品は、本当に渋い、本当の映画好きが勧める作品ばかりで、本作もその例にもれない、独特の雰囲気を醸す作品だった。
最後の最後まで、「?」続きの内容で、観る者を飽きさせない。
決して大げさなアクションや演出があるわけではない。
終始、一種ハードボイルドとも言えるような空気感が漂う。
そんな静かな展開ながら、内容がギュッと詰まっていて、一時も目が離せない作りは実に見事。
主な登場人物は4人、いや、どうでもいい存在の女を除くと、実質3人で物語は静かに進んでいく。
特に、殺し屋のボスと連行された裏切り者の、二人の対峙が心理戦のような痺れる展開に。
最初の印象では、殺し屋のボスが冷静で冷徹な殺し屋キャラ、それに対して、連行された男は度胸の据わった死を恐れないキャラ。
このキャラが、終盤になって、まったく崩れてしまう。
冷静で冷徹だと思われた殺し屋が、実は気分屋だし、女に情をかけて逃すわ、連行された男は宗教ばりに死を恐れない不気味な男かと思いきや、最後の最後で命乞い。
この序盤と終盤とのキャラ変が、実に面白いし、実に奥深い。
人間、誰もがしがない世の中を生きていく上で、表面上、仮面をかぶってどこか強がっている。
特に男はそうだ。
だが、追い込まれれば、誰しもシッポを出し始める。
要するにボロが出る。
そのボロを必至に探ろうとする男と、探られまいとする男。
相手より自分が優位に居たい、優位であると相手にアピールする男。
そんな人間味が、どんなにクールで冷静な雰囲気を持った男にも、必ず存在するし、特に、そこに女が絡んでくると、男は意外や脆いものである、と。
そんな人間描写、そして心理戦、金や女にまつわる欲、それらが短めの尺の中で、無駄なく鋭く描かれた逸品。