1.《ネタバレ》 ウェルズ、黒澤、ポランスキー、それぞれ構図やカメラワークへの拘りによって独自の作品としており、物語的にはラストシーンのマイナーチェンジ等に
各々の特色がよく出ているが、このジャスティン・カーゼル版もまた過去の『マクベス』3作品とは微妙に違ったラストで悲劇に含みを持たせている。
玉座の俯瞰ショットはウェルズ版を、森の中の疾走や濃霧は黒澤版を、凄惨な流血描写はポランスキー版を、それぞれ思わせたりしつつ
クロースアップや自然光主体のロケーション撮影をふんだんに採り入れて映画としての差別化をしている。
もっとも、その為に無駄にショットを割ってしまっているシーンも多いが。
CGの濫用は避けられているものの、合戦シーンのスローモーションやクライマックスでの象徴性の強い色使いなどはあまり感心しない。
火あぶりの炎は実に印象的だが、バーナムの森の炎上から始まる「赤」の氾濫はまるで張藝謀的である。
その森がどう動くか、『蜘蛛巣城』とまではいかなくとも、もう少しスペクタクルを期待したのだが。
男優側は顔貌の相似が災いし、その分マリオン・コティヤールが得をしている。