1.《ネタバレ》 子供が大人を殺しまくる映画といえば「ザ・チャイルド」などの先例があります。
でも、子供がゾンビになるというパターンは初見の為、新鮮な気持ちで観賞する事が出来ましたね。
中盤以降は、お約束の籠城展開になる訳だけど、その場所が小学校というだけで、もう面白い。
「携帯電話の持ち込みは禁止」という校則+「ゾンビによる電話線の切断」という展開によって、入念に外部との連絡を遮断し、何とか脱出に成功したと思ったら、実は学校の外も地獄と化していた……というオチも、お約束だけど良かったと思います。
そんなベタな展開の一方で「主人公とヒロインが結ばれない」「序盤に腕を引っ掻かれたので、絶対に主人公もゾンビ化すると思っていたら、大丈夫だった」などのセオリー外しも、意図的に行っているのですよね。
主演のイライジャ・ウッドが「ホビット」と言われて意味深な反応をしたり、車にされた落書きの「しゃぶれ」というワードが伏線で、その犯人である子供を「しゃぶれ」と言ってから轢き殺すシーンがあったりと、脚本も色々と凝っています。
子供ゾンビが死体で遊ぶ残酷描写、そして彼らをピッチングマシンやカンフーを駆使して薙ぎ倒す大人達の描写なども、それぞれ「観客が見たいもの」を分かっているというか、サービス精神が感じられて、嫌いじゃないです。
……っと、ここまで書いて気付いてしまったのですが、どうも本作って、ちょっと素直に褒め切れないような、微妙に感じる部分が多かったのも確かなんですね。
基本的にはゾンビ映画というだけで好みだし「主人公達は教師」「舞台は小学校」「ゾンビとなるのは子供達」というキーワードだけで(これは絶対に面白いはず!)と期待し過ぎたのかも知れませんが、それを差し引いても、観賞後の満足度は高くなかったです。
理由の一つとしては、根本的に敵が弱い事が挙げられそう。
序盤こそ(引っ掻かれるだけで感染するタイプか、こりゃあ子供ゾンビといえども油断出来ないな……)と緊張感も味わえたのですが、結局「大人は感染しない」という事実が中盤にて明らかになり、それ以降は死亡者すら出なくなりますからね。
これは流石に落差が激し過ぎるというか、何だか敵が勝手に弱体化したようにも感じられ、ノリ切れなかったです。
なんせ本当にゾンビ達が「凶暴な子供」というだけなので、一対一では「武装した大人」が圧倒的有利なんですよね。
じゃあ数の暴力で攻められるんだろうなと思ったら、一対多数でも結構余裕だったりして、全く危機感が無い。
その「敵が弱い」「主人公側が負けそうにない」という画面作りなせいで、ヒロインの彼氏による自己犠牲シーンでも(無理して残って戦わず、一緒に逃げれば良かったのでは?)と思えてしまうし、その後に「皆の為に犠牲になったアイツが、実は生きていた」展開をやられても、全然興奮しなかったです。
作り手側としては「実は生きていた」展開に説得力を持たせる為、敵に囲まれた状況から脱出しても不自然ではないような設定したのかも知れませんが(そりゃあ、あのくらいの強さの相手なら死なずに済んでも不思議じゃないよな……)と思えてしまったし、本末転倒ですよね。
最後に火を点けてゾンビ達を燃やすクライマックスに関しても、劇中人物はグラサンで格好付けて決めているのに、観ているこっちはといえば、完全に白けモード。
(貴重な液体燃料を使わなくても、そのまま逃げれば良いじゃん……しかも、ついさっき車がガス欠になるって展開やった後にコレかよ)なんて、意地悪な考えが浮かんできたくらいです。
一番不満だったのは、主人公グループに付き従う二人の子供達。
本当にもう「子供は全員悪役ってのも気分が悪いので、一応味方側にも付けておきましたよ。しかも男女の黒人と白人でバランスが良いですよ」くらいの存在価値しか見出せなくて、終盤に至っては台詞すら皆無で、実に勿体無かったです。
黒人少年の方なんかは、授業の際に主人公の書いた小説を読み上げるシーンがあったんだから、その後に「先生の書いた御話、面白かったよ。続きが読みたい」くらい言わせても良かったじゃないか、と思えましたね。
そうすれば「主人公にとっての、初めての読者」という関係性が生まれ、両者に絆が育まれるし、彼が糖尿病で倒れた際に、危険を承知で主人公がキャンディー菓子を調達しに行くシーンも、更に劇的になったんじゃないかと。
何て言うか、個々のパーツは決して悪くないんだけど、それらを乱雑に繋いでしまった……という印象ですね。
もうちょっと丁寧に作ってくれていたら「好きな映画」と断言出来そうだっただけに、勿体無い映画でありました。