1.《ネタバレ》 狂言歌舞伎の題目になっていて有名な佐倉惣五郎の直訴事件をストレート勝負で映像化、かつて活動弁士だった社長の大蔵貢がいかにも好みそうなお話しでもあります。監督は渡辺邦男で佐倉惣五郎役には嵐寛寿郎という、『明治天皇と日露大戦争』で天下をとった新東宝いちの黄金コンビでございます。 お話しは舞台化された佐倉惣五郎もので使われたエピソードというかネタを総動員したって感じで、謂わば集大成と言えます。堀田家のバカ殿様をはじめ家老連中のあくまで憎々しくて、王道のストーリーテリングで安心して観れます。もちろんアラカンも期待通りの重厚な演技、名主とは言え農民なのに役人とのいざこざで見せる立ち振る舞いはまるっきり剣豪のそれなのは、まあご愛敬です。惣五郎一家が処刑されてからのラスト10分は、怨霊となった惣五郎一家が悪役たちに憑りついて大暴れします。アラカンが「そこまでせんでも…これでは映画の余韻が台無しに…」と渋い顔したという話も伝わっていますが、やっぱ新東宝ですからこのお化け屋敷テイストは必須ですよね。 というわけで、深く考えなければ退屈せずに時間がつぶせる一編です。