1.《ネタバレ》 小森はるか監督は、『論集 蓮實重彦』にも寄稿されていて、やはりその土台には佐藤真監督の精神があることがわかる。
荒涼とした土地を行きかう車両の通過音が何らかの伏線のように、時に静かに時に賑やかにずっと鳴り響いている。
バンやトラックなどの作業用車両が多かったことを映画のラストで改めて思い起こし、
七夕祭りの山車や棟上げ式の賑わいと共に、それが失われゆく風景であったことに気づかされる。
作中で佐藤貞一さんが語る、柱の残った家の話。それもまたラストで分解され宙に突き上げられる井戸の管のショットと
図らずも重なり合うあたりも映画の不思議とでも呼びたい。
カメラを向けられた佐藤さんのなんとも魅力的なジェスチャー、英語を朗読する声、独白。それがカメラ側にいる不可視の小森監督に幾度も向けられ、
最初は遠慮がちに返答する監督を次第に映画に巻き込み、引き入れていくような感覚が楽しく、また感動的だ。
映画のラスト、佐藤さんが渾身の力でタネ屋を解体していく姿が強烈に印象に残る。