1.《ネタバレ》 前作『ブルーリベンジ』の批評面での大成功により、売れない映像作家から気鋭の若手監督に超絶ランクアップしたジェレミー・ソルニエの現時点での最新作。そのランクアップの成果はキャスト面に如実に現れており、アントン・イェルチンvsパトリック・スチュワートという新旧スタートレック対決をしれっと実現しています。実際に二人が直接顔を合わせる場面は少ないのですが、ちゃんと対決しているように見える辺りに、この監督の演出力の高さが垣間見えます。
あらすじだけを聞くとヒャッハーなネオナチがバンドメンバーたちをなぶり殺しにするような激しい内容を連想させられるのですが、実際には加害者側も被害者側も極めて冷静に行動をしています。これは感情を伴わない復讐劇だった『ブルーリベンジ』と共通する傾向であり、高い計算の上にえげつないバイオレンスを成り立たせるという微妙な匙加減こそが、この監督の作風であるようです。
もげかけの手首やカッターナイフで切り裂かれた腹部など、一連のゴア描写は見る者が痛みを疑似体験できるレベルに絶妙にチューニングされていてセンス良いなと思う一方で、籠城劇としてはあまり洗練されておらず、初期段階で主人公側が入手した銃をアッサリ手放してしまうなど、首を傾げるような展開があった点が残念でした。また、ネオナチ側の人数が無駄に多くて彼らの組織構造が分かりづらかったり、籠城者側に居た金髪パッツンの娘の立ち位置の説明がなかったりと、余計な疑問を抱かせる構図としたためにスリラーとしての没入感にも欠けていました。
あと、反ナチの歌を演奏したバンドメンバーがネオナチの怒りを買う話かと勝手に期待していたので、偶然殺人現場を目撃したという、もはやバンドやネオナチを主人公にする必要のないお話だったという点でも落胆させられました。監督の演出は相変わらず良いんだけど、ちょっとボタンの掛け違いが残念だったという、そんな映画でした。