8.《ネタバレ》 屈折した少年の生き様を飾り気なく描いた作品だ。
非行に明け暮れた少年が、感化院に入るハメになったのは当然の成り行きだったが、そこで彼の長距離ランナーとしての隠れた才能が開花し、彼の人生に最大のチャンスが訪れる。
しかし、彼はクロスカントリーの大会で、ゴール直前で失速。
この失速が、意図的なのか、それとも単にバテただけなのか。
そういった疑問を観る者に提起するが、やはり意図的だったと解釈するのが妥当だろうか。
彼の脳裏に過去の様々なシーンが浮かび上がり、それにうなされるようにして失速していったが、これは彼の中での“優等生になることへの抵抗”のようなものが原因である。
優勝すれば、優等生として周囲の期待に応えることができる。
しかし、その反面、彼は自分を裏切ってしまうことになる。
反逆精神の塊で生きてきた彼が優等生になるということは、すなわち自分をごまかし裏切ることになるのだ。
そんな葛藤がレース終盤で彼を襲い、失速してしまった。
いや、自ら失速したのだ。
あらゆる面で恵まれない環境で育った少年が、その根底に持っているであろう反骨精神を、見事に描いた良作である。