1.《ネタバレ》 同じフィンランド映画の「ヘイフラワーとキルトシュー」(2002)と同時に見た。原作はマルヤッタ・クレンニエミ(1918-2004)という作家の児童文学で、シリーズ6作のうち2作は邦訳も出ている。映画はこれを含めて3本が製作されており、そのうち2作が過去に日本でも公開されているほか、第3作も今年5月から日本各地で上映されているらしい。ちなみに映画の撮影場所は首都ヘルシンキの西北西80kmにあるロヴィーサLoviisaという小都市である(2019/1/31現在で14,873人)。
なお英題は「Jill and Joy」になっているが、「ヘイフラワー…」と違って英題でなく原語を邦題にしたのは正解である。「ジルとジョイ」では話にならない。
内容としては「ヘイフラワー…」と登場人物の構成が似ていたりするが、よりファンタジー感の強い話になっている。主人公の少女2人は7歳の設定とのことで、小生意気な連中かと思っていたらわりと素直で良心的な児童だったので安心した。
題名の「おうち」は極端にメルヘンチックな作りだが、要は劇中にも出ていたお人形さんハウスのイメージらしく、主人公2人が場面ごとに違う華美な服装(着せ替え)で現れていたのが目を引く。ご近所の魔女?が庭で異様なものを栽培していたことなどを含め、荒唐無稽でユーモラスな劇中世界が色彩感豊かに表現されている。
主人公2人は自宅に戻れば普通に現実世界の住人のようだったが、「おうち」にいても夢ばかり見ているわけでなく家事も一応こなしていたようで、また近所づきあいを普通にやっていたのも感心した。最後のパーティ場面では本来の家族も客人として招かれていたりして、「おうち」での暮らしが早目の自立心を育てる効果があったようでもある。
そのほか大人が見ても笑わせる場面が多いのでけっこう楽しい映画だった。エンディングが騒がしく品がなかったのは少しマイナスだが、全体としては「ヘイフラワー…」よりかえって純粋に面白かったかも知れない。
以下雑談として、主人公2人が呑気な暮らしをしていられるのは夏休みだからで、劇中では白夜という言葉も出ていたが、主人公2人がまだ明るいうちに寝床に入り、深夜でも夕方の風景だったのは7月頃のことかも知れない。後半になると普通に月夜の場面があったりしたのは少し日数が経っていたということか。
ほか大したことではないが、序盤の警察署の場面で、2人が正直者と思われているかどうか知りたいかと警官に聞かれ、アンネリが”Joo.”と答えたのはフィンランド語で普通にYesの意味だが、オンネリが「ウン」と言ったのは日本人かと思った。