2.《ネタバレ》 全編を彩るモノクロと見紛う様な暗い色調。登場人物の表情に差す暗い影。実際にヒロインに見えているのかいないのか、ある時は彼女を追うように、またある時は彼女を導くかのように縦横無尽に走る血の筋と蝙蝠のような小さな生き物。そして、壁から動き出す絵や縫いぐるみのトラ。
主要な画面の殆どを個性豊かな子どもたちだけで演じていて、劣悪な環境・状況の中、明るく逞しく生きている姿が等身大にリアルに描かれています。
舞台は揃った、あとは肝心のストーリーをどう展開していくか?といったところですね。
比較的短い尺の中、描き切れていない部分(例えば母娘の暮らしぶりや少年とギャングとの関係性など)もあるように思えますが、逆にあまり丁寧に描いてしまって長尺になるのもいかがかな?とも思えます。個人的には適度に省かれていた方がファンタジー的には良かったのかなと。
ラスト、細やかな幸せを奪った憎きギャングを母の元に連れて来た愛娘に、一人でも生きていける強い子になったねとの思いを告げるかのように、大きくなったらあげると約束していた鳥のブレスレットが母の手首からエストレヤの手首に飛び立ちます。
救いようのないような暗く悲しい物語に一筋の光を与え、扉を開けた少女の行く先には緑に輝く草原が広がる。ホラー転じてヒューマンドラマとしての締めくくりは美しいものでした。
ちなみに、邦題は少々ホラーを意識し過ぎているかのように思え、ストレートに母親を持ち出さなくてもいいように思えます。さりとてスペイン語の原題は少々分かりづらく、少々思わせぶりな感はありますが英題が一番しっくりと来ました。