1.《ネタバレ》 そもそも『ケーフェイ』て何なの?というのが一般的な感覚でしょう。これはプロレスの隠語で、佐山聡(初代タイガーマスク)の書籍名として、世に出た言葉と記憶しています。意味合いは『演出』や『台本』のようなもの。当然、真剣勝負の世界ではあり得ない概念であり、プロレス関係者(団体、選手、興行主、マスコミ、ファン等プロレスに関わる者全てを含む)は、決して口にしない(してはいけない)極めてデリケートな事柄であります。馬場と猪木が健在で業界を牽引していた頃であれば、このようなタイトルの映画が製作されるはずもないワケで、時代も変わったものだと実感させられます。さてお話の方は、プロレスラー崩れの無職のおっさんと、自分に自信を持てない小学生男子の交流が主軸で進んでいきます。クライマックスは、おっさん一世一代の大勝負!片や市議会議員、片や無職男、元同じマスクマン同士の一戦は、おっさんが自分の人生を肯定する為に必要な戦いだったのでしょう。『ケーフェイ』=自分で自分の人生を『演出』することも、時には必要なのであります。それこそ台本なんて無いでしょうに、阿吽の呼吸で試合をつくってみせるあたり、2人とも流石に元プロ。負けて輝くという意味でも、あの刹那、おっさんは紛れもなくプロレスラーだったと思います。ただし、その後奴が立ち直れたと結論付けるのは早計で、最後にきちんと労働に勤しむおっさんの姿を見せる必要があったとは思いますが。雰囲気は抜群なれど、ドラマとして物足りなさを感じる全体印象は、まさに日本伝統のプロレス様式と言えましょう。観客は自身と照らし合わせ、積極的に感情移入する作業を求められます。(完パケのドラマとして提供されるアメリカスタイルとの大きな違い)。ですから、作品として不完全なようでも、これはこれで正しい(日本式の)プロレス映画という気がいたします。主題歌について。ダイナマイトウルフの入場曲でもある『メタルディスコ』が素晴らしい!!バンド名はチッツ(ご免なさい。知りません)!世界観にベストマッチでした。この楽曲に出会えただけでも、私的には十分な収穫でした。youtubeでリピートしまくっています。最後にポスタービジュアルについても触れさせてください。ダイナマイトウルフの吠え顔アップ。レジェンドマスクマン・獣神サンダーライガーを彷彿とさせる表情で、おっさんの渋味や苦味が迸っております。これぞプロレスの美しさです。点数は引退するライガーに敬意を表して(?)加点しておきます。