1.《ネタバレ》 クメール・ルージュ支配下のカンボジアで、家族とともに過酷な運命に翻弄されたある少女の姿を実話を基に描いた戦争ドラマ。監督を務めるのは、社会的弱者の立場に寄り添って作品を撮り続ける人気女優、アンジェリーナ・ジョリー。ボスニア紛争、太平洋戦争と歴史の闇にスポットライトを当ててきた彼女の三作目となる本作のテーマは、カンボジア内戦とその後のポルポト政権下における大量虐殺でした。確かに歴史の巨大なうねりの陰で犠牲とならざるを得なかった人々の、その魂の叫びに耳を澄まそうというスタンスには好感が持てるものの、今回も彼女の欠点が大いに目に付く作品でしたね、これ。起伏に乏しいストーリー展開と全く個性を感じられないキャラクターたち、そしてさして印象に残らない地味なシーンの数々…。いくら事実を基にしていてもこれは映画なので、表現者として最低限の演出は必要だと僕は思うのですが、彼女はもうそんなことはどうでもいいみたいですね。ただひたすら事実の再現に徹しております。でも、三作目の本作において、とうとうそんな欠点を補える魅力が出てきたように僕は感じました。それは、地雷と言う悪魔の兵器への強い憎しみ。後半、ベトナム軍侵攻によって追い立てられたカンボジア人民が次々と地雷に巻き込まれてゆく姿は非常に凄惨で、生々しいリアルさに満ちています。片足や両方の足を失い、地面で痛みに耐えることしか出来ない犠牲者をただ見つめ続ける主人公の少女。人間の愚かさは何処までも果てしがないことに、改めて戦慄させられます。このシーンには観る者の心を打たずにはいられない、非常に強い力に溢れておりました。このシーンに出会えただけでも、僕はこの作品を観て良かったと言えます。アンジー、次からはもっとこういう心に直接訴えてくるシーン以上に、ちゃんとストーリーにも力を注いでもらいたいですね。