4.《ネタバレ》 前作の主人公カップルの娘が主人公という、正統派な続編。
とはいえ、方向性としては明後日の方に向かってるというか……
「無理やり作ってみました」感が凄かったですね。
まず、前作の女性大統領が「実は人類の絶滅を目論んだ恐竜人である」という設定になってるんだけど、そんな伏線なんて一切無かったはずなんです。
でもって「前作で死んだはずの元月面総統は、実は生きてた」「しかも彼は、ヒトラーの弟だった」「異星人であり、人類の創始者でもあった」なんていう真相が次々に明かされるんだから、ここまで来ると驚くより先に、呆れちゃいます。
(スケールを大きくすれば面白くなるってもんじゃないよ……)と、笑いながらではなく、真顔でツッコんじゃいましたね。
この「笑いながら」と「真顔で」の差が大きいというか、荒唐無稽な馬鹿映画でも「笑いながらツッコんで楽しめる」のであれば、全然問題無いと思うんです。
事実、前作に関してはギリギリで「笑いながら」ツッコめる範疇に収まってたし、楽しい映画と言える出来栄えでしたからね。
それが続編にて「真顔で」のラインに踏み込んでしまったという形であり、実に残念。
そもそも本作は「満を持してヒトラーが登場する」という内容であり、前作にて「ヒトラーが出てこないのが惜しい」という評価を下した自分にとっては、凄く褒め易い映画のはずなんです。
にも拘わらず、その低いハードルを越えてくれなかったというか……飛び越えずに、蹴倒してみせたような内容だったんだから、困っちゃいます。
だって本作のヒトラーときたら、単なる宇宙人を「実はヒトラーです。ヒトラーは宇宙人だったのです」って設定にしただけであり、ヒトラーである必然性なんて皆無ですからね。
ユダヤ人を特別嫌ってるって訳でもなく、ゲルマン民族の優位性を信じてる訳でもなく、人類全てを憎んで滅ぼそうとしてる異星人であり、ただ見た目がチョビ髭のオジさんというだけ。
唯一ヒトラーっぽいのが「絵を描くのが上手い」というワンシーンのみであり、これならヒトラーじゃなくチャップリンでも成立したじゃないかと、投げ槍にツッコむ他無かったです。
「核戦争で地球を汚染し、人類を滅亡寸前まで追いやった張本人」という、どう考えても一番憎むべき存在な女性大統領が、中盤で雑に退場しちゃうのも肩透かしだし……
ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を模した画面作りにして、キリストに相当する位置にヒトラーを置くとか、そういうシニカルな描写も、何かズレてる感じでしたね。
そりゃあ敬虔なキリスト教徒ならショッキングに思えたかも知れないけど、そうでない自分には全然ピンと来なかったし、歴史上の偉人や権力者などが「実は人間じゃなく恐竜人」って言われても(……だから何?)としか思えない。
Facebookの創始者であるザッカーバーグも恐竜人って事にされ「人類のオツムを空っぽにした功労者」であると皮肉気に描かれてるんだけど、Facebookが理由で馬鹿になるというなら、この映画を観る方が余程知能に悪影響なのではと、意地悪く考えちゃったくらいです。
一応、良かった点も挙げておくなら……
「ジョブズ教」に関してはラスボスを倒す伏線にもなってるし、ちゃんと意義のある設定だなと思えた事。
「頭は弱いけど、気の良い力持ち」っていうマルコムは、中々魅力的なキャラだった事。
それと、前作のヒロインであるレナーテが、聖杯の力を得てスーパーガールみたいに超人化し、恐竜を素手で倒しちゃう馬鹿々々しさは好きとか、そのくらいになりそうですね。
最後は「月にナチスが移住していたように、火星にはソ連が移住済み」ってオチになってましたし、続編も作る気満々なのが窺えるんですが……
2023年現在「アイアン・スカイ:ジ・アーク」の製作は難航中で、続編を拝める可能性は、かなり低いみたいです。
それを踏まえて考えると、本作に関しては「一本の映画として完成している」というだけでも、御の字なのかも知れません。