1.ラッパーのダースレイダーと時事芸人のプチ鹿島が主に政治について語るYoutube番組「ヒルカラナンデス」の選挙特番である「センキョナンデス」の劇場版。毎週観てる視聴者としてはこういう前説はもう食傷なのだが、自分で何か書くとなるとやはり外せないハイコンテクストな作品ではある。
正直言って観に行く前は「iPhoneで撮った動画配信でやってる映像がスクリーン視聴に耐えられるのか」「さんざん観てる映像や同じ話をまた聞かされるのか」という不安があった。その懸念自体はそう外れてはいないのだが、109分の映画になると大きな「ストーリー」が鮮烈に浮かび上がる。それはこの映画の編集の上手さなのはもちろんだが、取材対象である「政治家」という特殊な職にある人間のパワーが自ら紡いで突き出してくる。
この映画に登場する政治家には名優もいれば大根もいるしその中間もいる。そしてやはり政治なのでみんな政党の戦略の中で自分の役を演じざるを得ない。その葛藤が白日の下にさらされて実に面白いのだが、中盤以降この「物語」の中心をさらっていく人物が現れる。もちろん監督二人の政治的スタンスははっきりとしているし、どれほど中立を掲げてもどうしたってバイアスはかかるが、カメラの前で誰がどんな条件で自分の言葉で話をするか、それともしなかったかは明白だ。
この映画を観れば政治家という人々、我々の生活を直接左右する仕事をしている人々に興味を惹かれる。その人々が人前でありのままをさらけ出されるのが選挙であるということが分かる。だから選挙に行こう、その前の選挙活動を見に行こう、会いに行こうという気にさせられる。