1.《ネタバレ》 公開当時、一部の識者から「ヤバい」と言わしめた怪作をようやく見れた。
タイムスリップ、ミュージカル要素があるとは知っていたが、意外にも"普通の映画”だった。
初めてテニプリを見る人には開いた口が塞がらない凄まじさだが、
私にはもっと狂ったものを期待しただけに肩透かし感はあった。
原作漫画こそ原点で頂点ということを再確認した形だ。
CGがプレステ2並みのクオリティだなんて些細なこと。
テニスギャングやらラップバトルやら脚にラケット付けてテニスやら、アレな情報量が多すぎる。
現役時代の南次郎に見つかっても、家族共々なぜか受け入れてしまうしツッコミどころ満載。
歴史改変を始めとしたタイムパラドックスとか大丈夫?かなんて気にしない。
「だってテニプリだから」で片付けられるヤバい世界だから。
原作の最初期に登場し、終盤につれて次第に存在が透明化していったヒロインの桜乃が、
本作ではメインで活躍していたのは嬉しかった。
原作者が製作に関わっているのもあるが、『テニスの王子様』の本質に立ち返った物語になっていた。
本作には二つのバージョンが存在しており、公衆電話からの通話相手がそれぞれ違い、
己の価値観に基づいたアドバイスをリョーマに授ける(全体のストーリーに大きな変化はなし)。
クライマックスでは強さの根源を探るべく南次郎と試合するのだが、なぜか青学の先輩たちを始め、
他校の選手たちも召喚されて踊り狂うミュージカルに。
特に突然の柳生比呂士の独断場に笑ってしまった。
声優がかつて『アナと雪の女王』のハンス役の吹き替えを担当していただけあって、
わざわざこのシーンのためだけにその上手さを笑いに変えているのがズルい。
少年誌原作ながら女性ファンの心を射止め、乙女ゲームまで作り、
ドラゴンボール並みにインフレ化していくギャグバトル"テニヌ"漫画としての側面も忘れない。
老若男女、誰もが笑顔になる、それが『テニスの王子様』だ。