20.《ネタバレ》 ↓【リン】さんの投稿を機に、観たい観たいと思いつつ、約半年経ってようやくDVDをレンタルして鑑賞できました。
まず、初観賞時の感想から。
当作品の存在を知ったのは高校生のとき。ちょうど【スタートレックⅡカーンの逆襲:1982年】を映画館へ観に行ったときです。上映前に当作品の予告編が流れました。トレバー・ジョーンズのファンタジックな音楽と共に映し出された映像の数々は、それまでの円谷作品やハリーハウゼン作品とは異なるもので、食い入るように見つめたものです。後日、ロードショー公開されたとき、すぐ映画館に足を運んだのは言うまでもありません。
敢えて予備知識を仕入れずに観たのですが「何だか主人公達を軸にしたストーリー展開がサラサラッとしているな…」と感じました。しかし全編、架空のキャラクターだけで繰り広げられる世界には魅了されましたし、特にラストは興味深く、私はTVシリーズ・スタートレック(1966~69年)の第1シーズン第5話「二人のカークThe Enemy Within」を思い出しました。*若い世代の人達は、ドラゴンボールの神さまとピッコロ大魔王の関係を想起するかもしれません。
なお、当時は「驚異のロボットロニクスを駆使した」と宣伝していました。観終わった後にパンフレットや資料を読むと、要は、セサミストリートのスタッフさん達によるリアルなマペットであり、そのプロトタイプが【スターウォーズ帝国の逆襲:1980年】に登場したヨーダだと知りました。そしてヨーダの実現に向けてヘンソン&オズとの架け橋になったのが、【帝国の逆襲】のプロデューサーだったゲイリー・カーツであることも。
資料を読んだ後の感想は「ロボットロニクスと言わず“セサミストリートのスタッフがスターウォーズのヨーダの技術を活かし、リアルなファンタジーに挑んだ意欲作!”と宣伝したほうがわかりやすかったのではないか。ただ、日本では、人形劇を映画館まで観に行く人達は少ないかもしれないな。仮に観に来たとしても“両親や一族を殺された主人公達が世界の運命を変えるために”というシリアスな物語では、セサミストリートの延長上の物語を期待した人達は戸惑ってしまうかも…」と、複雑な心境になったものでした。
次に、今回の再見について。特典映像の制作秘話も含めて鑑賞できたことが、有意義でした。
製作の発端の【原型】がスケクシス族だけあって、造形や演出の細やかさの比重がスケクシス族に占められていることを再認識できました。そして、それが初観賞時の「主人公達を軸にしたストーリー展開がサラサラッとしている」という印象につながっていたのだろうな…と納得しました。また、スケクシス族達のペチャクチャした口調・喋り方や、汚く食い散らかす食事のシーンに対しては、クッキーモンスターの食べっぷりなどセサミストリートの演出をあらためて連想しました。
その他、現在の自由自在に動き回るCGの映像を観慣れたためでしょうか、当作品のキャラクター達の動きの特徴(制約も含む)には【人形劇らしさ】が散見していると感じました。そのため、現在では、この【人形劇らしさ】を好意的に捉えられるかどうかで、当作品への評価も分かれるかな…とも思います。もっとも、ラストシーンの主人公二人の瑞々しい表情は、人形かどうかがの意識が吹き飛ぶほどの素晴らしいものだと思います。
一方、特典映像を観てショックだったのは…ジム・ヘンソン氏は、当作品を発表した数年後にお亡くなりになっていたんですね。フランク・オズ氏が、スターウォーズシリーズのヨーダ役で健在だったため、ヘンソン氏も活躍しているとばかり思っていたからです。今回の再見で「ジム・ヘンソン氏のお人柄と情熱が、スタッフ一人一人のクリエイティブなエネルギーを育み、結実した結晶こそが当作品なんだ。この作品の魅力・輝きは、ラストシーンのクリスタルのように永遠に失われることはないだろう」と実感しただけに、あらためてご冥福をお祈りいたします。
さて、採点ですが…まず、鑑賞環境は【映画館】とします。そして同時期に観た【スタートレックⅡカーンの逆襲:1982年】に対し、私は当サイトで9点をつけました。それよりも好きな作品(トレッキーの皆さんゴメンナサイ…)なので、必然的に点数はアップし、大甘かもしれませんが10点を献上させていただきます。ストーリーを追う以上に、その背景にある【手作り】の情熱を感じていただける方々に、特典映像と共に、是非、ご覧いただきたい作品です。きっと、クリエイティブなインスピレーションを得ることが出来ると思います。